東北新幹線新型車両はやはり「はつね」がよかったと思う

初音ミクの消失 / cosMo@暴走P feat. 初音ミク(ジャケットイラストレーター:左 )

初音ミクの消失 / cosMo@暴走P feat. 初音ミク(ジャケットイラストレーター:左 )

Brad Mehldauの『Highway Rider』が素晴らしかったのもつかの間、cosMo@暴走P feat.初音ミクの『初音ミクの消失』もまたとても素晴らしかった。
Vocaloidの「初音ミク」を知っている人は多いと思う。けど、僕はとくに興味を持つことなく今日まで過ごしてきた。
それがたまたま上記アルバムのタイトル曲PVを見てたまげたのだ。


このアルバムの面白さは、初音ミクという一種の機械が、誕生し、愛され、しかしさまざまに使い倒され、どんな楽曲も歌わなければならないという定めがしだいに彼女の歌姫としての自我(?)を崩壊させていく、という過程をストーリー仕立てで描いているところだ。自らの存在に疑問を抱きはじめたミクは、自分の将来をシュミレートし、4つのバッドエンディングを導きだす。そして最後の2曲で、その暗く悲しい平行世界から再生する。感動以外の何者でもない。(このアルバムのコンセプトは東浩紀の『QF』などと同じ平行世界モノと言える。)
そしてバッドエンドのひとつであるこの曲のように、人間には決して歌えない歌い方をさせることで、なんともいえない瑞々しい音楽が生まれていることが、何より新しいもの好きな僕を震えさせるのである。(ジャンルとしてはアニソン+プログレではあるけれど)


初音ミクは面白い。そこにはいろんな利用法(世界)がある。上に紹介したのが「自らの存在意義をメタ的に問う」だとしたら、


・ふつうにヴァーチャルなアイドルとして

・ただ声を利用して

・あってはならない歌詞も歌ってしまう

Vocaloidミュージカル


これは、もう、ほんとうに名作(でも未完のまま途中で止まってしまった)。物語は、売れに売れた初音ミクを妬むMEIKO(ミク以前に発売されてたVocaloid)が事件を起こすも、腹黒いミクに返り討ちにあい、ひどい仕打ちを受けるという話。圧倒的な音楽的センスと面白さ、かわいさ、絶妙な映像と、同じものづくりとしてこれに勝てる気がしないから凹む。ちなみにここに貼ったのは第1話「私だってVocaloid」と第2話「3秒ルール」で、この後「おもいよとどいてよ」「カイトとミクと扉の向こう様」「一人」「新幹線」と続く。詳しく知りたくなった方はhttp://dic.nicovideo.jp/a/%E9%BB%92pへ。


このクオリティの高さ!
初音ミクの面白さは、誰もが言ってきたようにCGM(Consumer Generated Media)の面白さなのだけど、ようするにミクの場合は、
みんなが寄ってたかって無償で世界をつくりあげていく(膨大な楽曲やPV、MMDなど)
みんながいいと思ったものは設定に加えられていく(例えばネギ)
高速で歴史が造られていき、引用やズラシによってフィクションがどんどん緻密になっていく
それを支えているのがミクへの愛、ミクという現象への愛(萌え、そして最先端である自負など)
ということだ。このようにして創作が行われていくということ自体が革新的だったわけで、ベタというかナイーブすぎるのかもしれないけどCGA(Consumer Generated Architecture)があってもいいんじゃないか、と思ってしまうのである。
愛が引き起こす無償の行為、というものを、建築を存在させる基盤として考えられないか、と難しいことばで思いながら、初音ミクをうらやましく思うのである。