(第一話)ユニテのレシピ

ル・コルビュジエ(以後、コルさん)という人は、近代建築の3巨匠と呼ばれる人で、日本だと上野の西洋美術館で有名です。去年僕の友人が、「西洋美術館を世界遺産に!」というような会のパーティーで発表原稿を書かなきゃいけないから「コルビュジエって誰だか教えてくれ」と言ってきました(建築の人じゃないのです)。僕は「あれはどう転んでも世界遺産じゃないだろー」と思ったのでそう伝えておきました。勝手なことしてすみません。

2005年9月7日撮影

『コルさんの「尺度」で設計』は、ユニテ・ダビタシオン*1のレシピを紹介するものです。本当にそうやって設計したかどうかは知りませんが、コルさんは「5つの尺度」というものを発明していて、その5つの尺度を使えば、誰でも簡単にユニテをつくれます。本当です。建築学生でなくても作れます。
その「5つの尺度」とは、

1 3次元の都市計画(人口の尺度)
2 7Vの法則(速度の尺度)
3 都市計画のグリッド(都市の尺度)
4 気候のグリッド(気候の尺度)
5 ル・モデュロール(寸法の尺度)

と呼ばれます。モデュロールはけっこう有名ですが、他の4つはあんまり知られてないんじゃないでしょうか。


これらは「尺度」ですが、「尺度」というのは「本来は無限にあるはずの選択肢を有効ないくつかに還元してできたもの」です。わかりやすく言えば、「整数」は「12.68453」とかいうダルい数字をやめて、単純な「1,2,3..」で考える便利なツールです。それと同じで、「5つの尺度」は「建築の設計をする上で考えたいいろいろなこと」を「わかりやすい選択肢に変えてしまおう」というものです。


なんでこんなことを紹介したいかというと、僕は、コルさんというひとは「より多くの問題を解決することでオリジナルな建築をつくった」人だと思うのですが、じゃあコルさんはどうやってそれを可能にしたのか、ということが気になったのです。つまりコルさんの「戦略」を紐解こうということです。「強い単一のコンセプト」に真っ向対立する建築の設計論を、コルさんに学ぼうということです。
では、よろしく。

*1:ユニテ・ダビタシオンと呼ばれる建物はフランスに4つ、ドイツに1つあります。マルセイユのものが一番最初で1952年竣工。長さ135m×幅24m×屋上床高さ54m、338戸1500人のための集合住宅で、中間階には商店街やホテル、17階と屋上には体育室や保育室といった機能があり、まるでひとつの自律した街のような建物です。ま、でも現在からみれば「でかい団地」じゃんということになります。