森永がすごい

「逆チョコ」をコンビニで発見して驚愕した。なんだこのくだらなさは。くやしいが素敵だ。こんなに馬鹿馬鹿しいのに店内で一番かしこく見えてくるコンビニのばかさ加減もどうなんだ。


任天堂の社長が「不要不急のものをつくっている」というようなことを言っていたが、チョコレートも不要不急の商品である。でも、普通はそんなことをメーカーは意識しない、というより「すすんで」忘却する。そしていかに必要かをパッケージにやたらと書く。とくにチョコレートの原料であるカカオはもともとアメリカ大陸で薬としても飲まれていたために、いかに健康によいか書くのは簡単だ。「フラボノイド」とか「ポリフェノール」とか言われると「よくわからないけどおいしくて健康によいのね」と思いこみ、気づいたらほおばっているという事実に私たちは敗北し続ける。

「逆チョコ」がすばらしいのは「チョコレートってまぁ、あれば嬉しいけどなくても困らない程度のものだよね。だったらふざけてもいいじゃないか。それぐらいやらせてくれよ」である。内容もないのにいやらしく消費意欲をかき立てる商品の群のなかで、「逆チョコ」は輝いていた。あの「おやつ」の棚の全部が逆だったらいいのに。あらゆる宣伝文句が逆ならいいのに。「ドイノボラフ」とか「ルーノェフリポ」が必要と真顔でいわれてもまさか健康にいいとは思えないし、むしろ食べたらばかになるんじゃないかと不安だ。不安だが、買ってもいいかなと思う。


コンビニで「逆チョコ」を発見してなんだか心暖まったあとで、あまり見たくもないが森永のホームページを見たら「逆チョコとは、バレンタイン時期に、通常の“女性から男性”ではなく、“男性から女性”へチョコレートを贈ることです」とあった。そうか、チョコレートをもっと買ってね、ということなのか。なんだか真相は世知辛い話だった。